吉川 稲美

活力のある“人財の森”づくりについて各界から語っていただきます。

吉川 稲美(きっかわ いね)さま

【所属】
株式会社吉香 代表取締役社長
全国商工会議所女性会連合会 会長
東京商工会議所女性会 会長
東京商工会議所 議員 教育問題委員会副委員長

【略歴】
67~75年に佐藤栄作元首相(故人)の秘書を経て、79年に国際会議等の企画・運営や通訳・翻訳事業のほか、人材派遣などを主要業務とする株式会社吉香を設立。現在、代表取締役社長。

――――人と人がつながり合った"人財の森"をどう作っていけばよろしいのでしょうか?
 森の成り立ちというのは、やはり大きな木、小さな木やもろもろの種類があって、季節の変化によって葉を落とし、養分となって木を育てています。大きな木があるから、小さな木も守られ、小さな木や可憐な草花があってこそ大きな木もしっかりと根を張ることができ、自然の摂理にかなった美しい風景が構成されます。自己主張することなく、お互いに助け合いというか、守られながら循環しながら、森は永遠に続いていくのだと思います。

 人間社会も、"人財の森"も同じです。みんなが自分が自分がと主張する大きな木ばかりでは、結局なにも育たないのだと思います。

 私も教えられたことですが、自然の中から人間の生き方を学びなさい、自然の中にすべてが示されています。現代社会は競争に走りすぎて、自分だけとか、自分の会社だけよければ、という人間の欲で、結局地球の生態系を壊してしまったのではないでしょうか。

 自分の立つ位置を知ることが大事だと思うのです。人間は生き方を計画して生まれてきている、と聞いています。自分がどういう人生を生きるか、という目的をしっかりと自分の中を見つめて、なおかつ今自分がどういう立場であるかを知ることです。まずは、「自分の分を知る」「自分の位置を知る」ことが人間社会の中での秩序というものだと思っています。

 私は、今自分が何を為すべきか一人ひとり考えていけたら、"人財の森"は少しずつ着実に育っていけるのではないか、と思います。

 最近、私ども東京商工会議所女性会で行った「共生(ともいき)のこころ展」の場合も、やはり、それぞれの得意な分野や為すべき事を心得ていたことが成功につながったと思います。

――――それぞれの得意分野、持ち味を生かすとはどういうことでしょうか?
 宮大工さんは、曲がった木も上手に用いて、その形、それぞれの持ち味を持った木を組み合わせて、地震が来ても崩れないようなお社を建てますよね。  それと同じように、会社も組織もそれぞれの持ち味を生かして納まったときに、強固なものができるのではないか、と思います。また何の目標もなく日々過ごすのではなく、人間としてこういうことを身につけたい、と自己目標を持って生きるときに、人間としての価値基準が定まり考え方がブレなくなるのではないか、と思います。それが人間の信用につながります。きちんとした目標を持って、どんな時でもどうすればよいか考えることです。

 私も、今まで自分なりに、力不足ながらまっすぐ生きてきました。それから人から頂いた恩に対しては、必ず感謝の気持ちを持ちながら、何らかの形でお返ししたいと思っています。今回の「共生(ともいき)のこころ展」では、商工会議所という大きな信用と会員一人ひとりの個人の信用と合わせて、大きな仕事ができたのだと思いますし、感謝しております。

―――一人ひとりの価値観と企業の価値観をどのように考えていったらよいでしょうか?
 競争社会からの脱却を図ることが大事です。小さな単位の家庭、地域、国、世界も同じだと思うのですが、会社は、人間の集合体ですから、一人ひとりが変わればその集合体は変わっていけます。

 企業ならば、会社のトップである社長が、どうリーダーシップを発揮するかです。私どもは、仕事を通じて、自分の人間性を高めることを目標にしています。何のために生きるのか、を問うて、精一杯仕事をすれば結果はついてきます。トップである社長がどういう目的・理念で、どういう形で経営しているのか、それに対して周りの社員たちがどう理解する努力をし、サポートをするか、このことを常に意識することが大事です。

 自分の立つ位置を知るということは、自分の持ち分がどこだろうかを知り、今はそれを キチンとすることが会社としての経営が固まることだと思います。会社も、社長を飛び越えようとする動きがあると、組織が乱れるものですが、組織も秩序、というか、ものの順序はどうか、を見定め、それぞれが立つ位置を知って、真剣に取り組めば磐石になってくると思います。

吉川 稲美(きっかわ いね)さま ――――29周年をお迎えとのことですが、変化をお感じのことは?
 スタッフに今言ったような話を30年近く言い続けてきて、社員もだんだんと理解してくれています。公職もあり相当外に出ていますが、考え方の下地になっていることを共有していることや、各人が自分は何を為すべきかを考えながらやっていること、社長に恥をかかせないように頑張ろうという、社員の思いが力になっています。

 今年は、翻訳や通訳・ビザ発給、留学生の受け入れなどの仕事がいろいろと増えています。内心でそういう仕事がしたいと常に思っていると、そういう思いが状況を引き寄せてくる。日ごろより目的を持って、それに向かっていく。また、日ごろから常にそのような思いを持って、小さな行動の中でも、基本において着実にやっていると、信用につながると思っております、そういう話がどこかで出てきた時に、あの会社ならちゃんとやってくれるのではないか、と仕事のお話を頂き、まとまっていく。こういうふうに話題にして頂けるのも、日ごろの足元のところで、一所懸命積み重ねた努力が、結果的に成果につながっているのだと思います。

 ともすると、私も含め多くの人間は、小さな努力で大きな成果を得たいと思いますが、それは欲だと思います。それですと、どこかで人間には不安感が残ると思います。でも、日々の努力が磐石であったならば、例えば10努力して成果が1だとしても、心の中ではすごい余裕が出てくる。その余裕というのは見えないエネルギーとなって、その人自身の雰囲気を作っていくのだと思います。  ところが、1の努力をして10の成果を求めるときには、人間の気持ちには安定というものが生まれないと思います。落ち着かない気持ちのときには、いいものができないというのが私の考えです。

 会社で言えば、社員一人ひとりが日々の努力をどうやっていくかです。私は古い人間で、自分の背中を見せればよいと思ってきましたが、どなたかの本にもありましたが、やはり背中も見せながら、言葉も出していかないといけない時代になっていると思います。私もしみじみ感じました。その本に出会ったことによって私の考え方に多少自信と余裕が出ました。そういう積み重ねではないかと思います。やっぱり29年会社を経営して参りましたが、10の努力があって得られる、1の成果を大切にしたいですね。

――――見えないエネルギーが良いものを引き寄せるということですね。今は、非常に恵まれた時代でありながら、感謝する言葉や、ものをいただくときの「いただきます」の言葉の意味も感じがたい。どうしたら感謝の気持ちをあふれさせることができるでしょうか?
 「いただきます」の言葉は、食べ物の「いのちを頂いているのだ」ということですが、その意味を知らない、聞いたことがなかった、という人が結構多い。ですから、そういう教育がなされないところに基本的に考え直すべきだと思います。私自身も今まで皆さんから教えていただいて「ああそういうことだったのか、ああこういう考えをなさっている方なのか。だからこういうふうに素敵な雰囲気を出していらっしゃるんだな」と人の姿から勉強させていただいたんですね。声に出し、また言葉を形にして教え合うことが必要だと思います。

 当たり前のように物があふれているから、感謝することを忘れてしまったのだと思います。飲むもの、食べるもの全部が大地からの恩恵です。その恩恵を受けて、自分たちは人間として生かされているんだ、そう考えましたら、地球は私たちの親ではないかとも思います。

 最近、子どもが親を親とも思わないという事件が見られます。私たちの親である地球に感謝する気持ちを失ってしまったことが、こういう事件の根底にあるのかもしれません。

 また私は「自分に厳しいことでも何でも言われたときに、まずは、『ありがとうございます』といいなさい」 「人は嫌なことを言ってくれた人こそ大事にする」やはり嫌なことを言うことはすごく勇気が必要なのですから 「まずは『ありがとう』をいいなさい。それから言われたことをよく考えて気づきを得なさい」と教えられました。

 人間は気がつかないとわからないですし、いつもでも変われません。だから自分が気が付くための助言をくださったと感謝すべきです。人それぞれ価値観が違うから、自分の意見をはっきり述べることも大事ですが、周囲の意見との両面で、自分が考える力を持つことを、皆さんとご一緒に努力していきたいと思っております。

吉川 稲美(きっかわ いね)さま ――――本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。感謝の気持ちを持って、自分の立つ位置を知った"人財の森"づくりという観点からお話いただきました。


 (高重 和枝)

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