
第118回 「ESDから学校教育3.0を展望する」
2018年5月24日(木)午後7時から「ESDの実践は?」「『学校教育3.0』とは?どう変わるの?」に関心ある職員、経営者、NPO代表・職員、国家公務員、大学教員・職員、中学校教員、講師、ファシリテーター、図書館勤務、ジャーナリスト、ビジネスパーソン、アーティストなど27名が集い、対話しました。(感謝!)
⇒今回のご案内
◆第118回:「ESDから『学校教育3.0』を展望する ~NPO視点での大学教育改革の実践から~」
☆ゲストスピーチ
伊藤 通子(いとう・みちこ)さん<東京都市大学 教育開発機構 准教授>

学校のできることは小さいが重要。大事なこと、期待したいことを若い先生にバトンタッチし、「学びと教え」の場のあり方はどこへ向かうか?学校に関わる当事者がどう変わるか?を問いかけたい。
【学校教育3.0とは】
「教育1.0」は国家社会型教育システム。「教育2.0」:産業社会型(資質・能力重視)教育システム。「教育3.0 」は、1.0と2.0を内在しながら発展した持続可能社会型教育システム。学習院大学教授の諏訪哲郎氏が提唱し、今年4月に『学校教育3.0』(三恵社)を出版している。
明治以来、「教育1.0」だったが、高度成長期あたりから、「教育2.0」に移行した。産業界に役立つ人材の育成が主眼になった。しかし、世界の先端は、「教育3.0」に向かっている。
【日本の教育の課題と変化に対応しようとする学校】
①日本の教育の課題
情報の選択、活用ができない/議論、交渉ができない/合意形成ができない/課題を見つけられない/自己肯定感、社会参画意識、有用感の低さ/校内暴力・いじめ・不登校のような課題である。
②変化に対応しようとする学校
学校も変わる教育ニーズに従って、個人の価値の向上、質の保証、主体性・グローバル人材の育成に対応しようとしている。
【持続可能な開発とは】
未来の人たちも現代の人たちもニーズが満たされることが大事。環境と資源の有限性の問題について、資源をどう使う?間に合うか?途上国も含めて、みんな豊かに暮らしたいとしたら2.5個分の地球が必要になる。
持続可能な開発目標(SDGs)は途上国・先進国ともにステークホルダーが集い、作ったもので、私は希望を持っている。みんなで何とかすれば、変えられると思う。このSDGsの世界観を持って、教育2.0から3.0に大転換を図らなければいけない。
【PBLという学び方】
これまでの教育は、「Subject-based Learning:科目内容に基づいた学習」だった。学生に教え込む教育で、生徒は与えられる形だった。
「教育3.0」と親和性がある学び方は、PBL(Problem/Project-based Learning:現実問題に基づいた学習)。学生が問題を見出し、自ら学習して、問題を解決するために学んだ事柄を統合し適用する。
ここで重要なのは、「イノベーション」「チームで新しい知を生み出す」「一人ひとりの可能性を引き出す」こと。学生を競争させるのではなく、協力させる。個人の評価はしない。
この実践の先端はデンマークで、オルボー大学を5度訪問し、「教育3.0」の必要性を痛感した。デンマークの思想家グルントヴィの影響を強く受け、幼児教育から高等教育まで同じ思想で実践している。
黒板の授業での記憶はたかだか20%、人に教えたことは90%記憶に残る。富山高専では、学生が地域に出て他分野の人々と協働し、価値や知の創出を体験する授業をしていた。関係者と対話しながら潜在的な課題を明らかにして、解決に向けたものづくりで地域に貢献する。その過程で、立ち位置が変わり一般人から技術者になっていく。
ドイツで見た学校では、カリキュラムがなく自分の興味のあるところから生徒が自分でつくる。
【教育への想い】
PBL本来の効果を発揮するためには、興味を起点に学びを広げ深めること。デザインすること。
私が取り組みたいことは、「カリキュラムをデザインすること」「ワクワクする学びの場づくり」「評価のあり方を変える」こと。
充実した人生、豊かな社会を周りと協力しながら自ら創り出すことだ!
参考:伊藤さんの訳書『PBL 学びの可能性をひらく授業づくり: 日常生活の問題から確かな学力を育成する』(北大路書房)
https://www.amazon.co.jp/PBL/dp/4762829927"
◇人むすびカフェ ファシリテーター 角田 知行さん
今日のお題は、「今日のお話からあなたが受けたインパクトは何ですか?(気づき、問い、疑問、発見、確信…)」
教育を変えたいという思いあふれる様々な意見、アイデアが飛び交いました。
終了後のご感想を一部、紹介します。
・教育3.0は“持続可能な社会”を導く人財育成の方向に向かう!
・今までの1.0、2.0強すぎる。国家・産業⇔個人成長の結びつきが強すぎて、シフトが進んでいかないのか!
・「答えは一つではない」「変われる」参加者のみなさんからエネルギーを感じました。
・「教え合い」や「発信」の機会が、自己有用感につながり、その楽しさ、おもしろさに気づける人が増えることが大事 等





