
第71回:「地域に必要な地元メディアの役割とは~常陽新聞の挑戦」
2014年6月17日(火)午後7時から「地元メディアの未来は?」「活性化するには」に関心深い地域メディア関係者、広告代理店、中小企業診断士、団体職員、NPO代表・職員、大学教員、大学研究者、ビジネスパーソン、金融パーソン、コミュニケーションデザイナーなど33名の場づくり人が集い、対話しました。(感謝!)
地域が元気になるために欠かせないのが地元密着情報の発信力と共有力です。地域に必要な地元メディアのあり方を、茨城県南部で2014年2月から「再発刊」した常陽新聞の挑戦から考えます。
常陽新聞は2013年の夏に廃刊になりましたが、ベンチャー企業を育成する投資会社社長の楜澤さんが乗り出し、自ら社長になって新たな地域メディアとしての新聞づくりに取り組んでいます。
◆第71回:「地域に必要な地元メディアの役割とは~常陽新聞の挑戦」
☆ゲストスピーチ&質疑応答
楜澤 悟(くるみさわ・さとる)さん(常陽新聞株式会社・社長、ユナイテッドベンチャーズ株式会社・社長)

大学卒業後の1993年にコンサルティング会社に就職後、1996年にソフトバンクに入社。
多チャンネルの衛星放送のプラットファームの立ち上げやマーケティング会社の立ち上げに参画するなどを経て、2007年に独立以来、主にベンチャー企業の支援などを手掛けてきた。「畑違い」の新聞業界だが、メディアのビジネスにかかわってきて、地域密着メディアは苦しいようでいて、実は大きな可能性があると感じていた。
【私たちの常陽新聞】
新生「常陽新聞」は、地域で60 余年の歴史をもつ「常陽」の商号を引き継ぎ、「地元に 密着の地域紙」「紙面と電子版のセット提供」「熟年層に加えて子育て世代をターゲット」にして地元密着の「生活必需品」の地域情報をお届けしている。
大きさや紙面構成も一新、タブロイド判の大きさにした。これで読みやすく、親しみやすくなった。
主なターゲットとするのは、県南の土浦市を中心とした常磐線沿線、つくば市を中心としたつくばエクスプレス沿線の20~40代の「子育て世代」。地理的には隣り合う両地域だが、つくば市では人口の約53%が30代以下と、若い世代が多いのに対し、土浦市では逆に50代以上が約44%と比較的年齢層が高い。
住民の層が違えば、もちろん求める情報も違ってくる。そこで新生「常陽新聞」では両地域をひとくくりにせず、それぞれ一面ずつ、「つくば・TX沿線版」と「土浦・常磐線沿線版」を扱う構成をしている。地元の人にとっては「無いと困る」というか、「知ってたほうが便利な情報」があると思う。
新会社は、社員20名。班は大きく2つに分かれ、地域密着している。記事の末尾に「記者のつ ぶやき」コーナーを設け、記者の顔が見える新聞にしている。住民のリレーエッセイなど もある。
以前の部数は5000部未満。目標部数は、創刊1年で「10000部」とした。
【新聞業界の概況】
旧常陽新聞の廃刊からもわかるとおり、「新聞離れ」が続く中、地方紙は斜陽と言われな がらしぶとくがんばっている。現状、販売収入、広告収入は半減。世代別にみれば、2001年と2011年を比べると10代は6割、読まなくなっている。
しかしながら、地域密着したメディアとしては新聞は1位。むしろ地域情報の需要という観点から、実は部数を伸ばしていたり、利益を出しているところはいくつもある。地域ごとに5版出している松本市の「市民タイムス」(67000部)など。地方紙にはまだまだ可能性があると見ている。
70年間、変化がない業界で、業界地図が変わってないが、そのなかで強みが維持できているところもあれば、そうでないところもある。
紙の新聞への接触率は高く、信頼性が高いと読者は感じている。長い歴史に裏付けられた信頼があり、広告への信頼もネットより大きい。 フリーペーパーは成長を続けているが、「狭く深く」細分化している。ここでは、地域性を分析し、適した広告を出している。これは新聞社が取り込めるかも知れない。
地方紙では、全国ニュースと違い、地域情報はネットでもあまり出ていないし、また時代がどう移ろうと需要は変わらない。ある意味『生活必需品』。そこにチャンスもある。
最近の読者アンケート(115件:8割がWeb、Faxより)からは、40代までの読者が約 50%、また75%が新しい読者とわかった。まちづくりの話題、学校関連、イベントなど、自治体の市政情報に関心が深い。
106万人の市場なので、地域密着情報をお届し、電子版との連動による効果的なプロモーション媒体としても活用してもらえたらと思う。地域の皆さんとともに紙面づくりをしていきたい。
◇人むすびカフェ ファシリテーター 角田知行さん
今日のお題は、「常陽新聞(地域紙)の魅力をさらに高めるためにどんなアイデアがありますか?」
・地域紙は「まちづくり会議」の役割を果たすとよい。まちの人が参加できるプラットフォームとなる。
・ハイパーコミュニティメディア
・「会いたい」メディア、「出る」メディアへ
・紙媒体とWeb/SNS/動画媒体との連携をする事で各地域メディアの魅力を高めていく事が出来るのでは?
・まちの人が記者になる
・「言論NPO」 市民が自由に情報を発信、常陽新聞が整理して紙面に載せる、紙面に載らない多様な意見をネットで見せる。 ・報道と消費行動ともっとつなげられれば 等

